システム開発の発注先を探すとき、見積り金額と検索順位だけで決めてしまうと後で高くつくことが多いですよね。本稿では費用・技術・体制・リスク管理・継続性の五つの軸を掘り下げ、経営層や情報システム部門が発注判断を下す際の視点を整理しました。最後に社内稟議でそのまま使えるチェックリストも掲載しています。
1. 費用─「人月単価100〜220万円」は目安。総保有コストで比べる
多くの見積書は「人月単価 × 工数」で提示されます。国内相場は100〜220 万円/月程度ですが、この数字だけ見ても本当の高い・安いは判断できません。
総保有コスト(導入から廃止までの総費用)を算出しましょう
- 初期開発費
- 年間の保守・改修費
- インフラ運用費(クラウド料金やデータセンター費)
- 障害対応で失う機会損失
- バージョンアップや技術更改に必要な再投資費
これらをすべて合算した金額で比較すると、「あとから追加請求が重なる会社」を避けやすいと考えられます。
2. 技術─最新技術も良いが、長期安定かつ最新の技術基盤を採用しているか
- 枯れた最新技術という視点
例えば、Laravel は十年以上の実績と大規模コミュニティを持ち、最新の PHP 8 LTS と組み合わせればセキュリティ更新が長期間保証されます。その他、Javaや.Netなどの場合でも、最新の技術を取り入れる場合は十分な吟味が必要です。 - アップグレード容易性
- フレームワークの公開ロードマップが5年先まで示されているか。
- マイナーアップグレードの自動テスト手順が整備されているか。
- クラウドネイティブ設計
- コンテナ化・オートスケールに対応しているか。
- 監視やログ基盤がクラウドサービスと連携しやすいか。
「流行の最新技術」より 将来でもメンテナンスが容易な最新安定版 を採用しているかを評価する方が現実的です。
3. 体制─共同オーナーシップと「きちんと会話できるエンジニア」の伴走
内製化を加速させるには、社内情シスと外部パートナーが同じ情報を同じスピードで共有することが重要です。
- 専任 プロジェクトマネージャー と技術リーダーの顔が見える
連絡経路と決裁権限を明確にし、要件変更時の再調整を最短化します。 - 日次レビューでコードと設計を共有
情シスも毎日進捗を確認できると学習速度が上がり、属人化を防げます。 - 共同オーナーシップを契約で保証
リポジトリ共有、ドキュメント自動生成、設計資料の更新を義務化します。 - 「きちんと会話できるエンジニア」と伴走
業務知識を翻訳できるエンジニアが外部にいると、内製化の学習曲線が緩やかになると考えられます.
4. リスク管理─契約と運用プロセスを具体化する
リスク | よくある落とし穴 | 具体的な抑え方 |
---|---|---|
仕様の拡大 | 追加機能の金額が不透明 | 追加機能の単価を前もって固定し、優先度を合意 |
納期遅延 | 工程表にバッファがない | 週単位で進捗を可視化し、小刻みにリリース |
コスト超過 | テスト・運用費が別請求 | 年間ランニング費を初期契約時に明記 |
ベンダーロック | ソース非開示 | コードとドキュメントを常時共有する条項を設定 |
5. 継続性─運用フェーズの改善サイクルまで見据える
- SLA と運用 KPI(障害件数、復旧時間など)を四半期ごとにレビューする仕組みがあるか。
- IaC と自動デプロイが整備され、環境構築の手作業を排除できるか。
- 新しい業務要件が出た際、設定変更や小改修で吸収できる柔軟性があるか。
比較チェックリスト(稟議添付用)
判断軸 | 質問 | 必須/任意 | 候補A | 候補B |
---|---|---|---|---|
費用 | 人月単価が100〜220万円の範囲か | 必須 | 〇 | 〇 |
費用 | 5年間の総保有コスト試算を提示済みか | 必須 | 〇 | △ |
技術 | 長期的に安定を考えられる技術を使っているか | 必須 | 〇 | 〇 |
体制 | 「会話できるエンジニア」が専任か | 必須 | 〇 | △ |
体制 | 共同オーナーシップを考えられるか | 必須 | 〇 | × |
リスク | 追加機能の単価を事前に固定できるか | 必須 | 〇 | △ |
まとめ
- 人月単価100〜220万円という数字は出発点にすぎません。5年間分の総保有コストで比較すれば、後から追加費用が膨らむ発注先を避けやすいです。
- 「枯れているが最新」の技術を採用し、長期的なアップグレード容易性を確保するとトータルコストを抑えられます。
- 共同オーナーシップと「きちんと会話できるエンジニア」と伴走できる体制こそ、属人化を防ぎ内製化を加速する鍵です。
- 契約書には 追加機能の単価・コード共有・サービスレベル を明記し、リスクを定量管理しましょう。
これらの判断軸を押さえて選定すれば、導入後の手戻りと追加コストを最小限に抑えられると考えられます。
参考資料
- IPA「ソフトウェア開発データ白書 2024」
- GitLab DevSecOps Survey 2024 – https://about.gitlab.com/resources/devsecops-survey-2024
- Accelerate State of DevOps Report 2024 – https://cloud.google.com/devops/state-of-devops
💡
SIA株式会社 では Webシステム・ アプリ 開発 のご依頼を承っております。
ECサイト、マッチングサイト、予約システムなどのBtoC向け Web サービス や 社内で使用する業務用の Webシステム の実績も多数ございます。
過去の実績で培ったノウハウを活かしたご提案をいたします。
ぜひお気軽にお問い合わせください!