古い基幹システムは『コスト』ではなく『経営リスク』|先送りの代償と、いつ・何から刷新するかの判断基準
「動いているから大丈夫」は、“今動いているだけ”の話です
「うちの基幹システムは少し古いけれど、毎日問題なく動いている」——経営者の方とお話ししていると、よくうかがう言葉です。
ですが、これは安心の根拠にはなりません。経済産業省とIPAが2025年5月に公表した「レガシーシステム・モダナイゼーション委員会」の総括レポートによれば、国内ユーザー企業の61%(大企業では74%)に、いまもレガシーシステムが残存しています(約4,000社が回答)。つまり「古いシステムを抱えたまま」は例外ではなく、多数派です。
そして本当に注意すべきは、この問題が「IT部門の技術的な課題」ではなく「経営の意思決定の課題」だということです。動いているうちは誰も困らない。だからこそ判断が先送りされ、気づいたときには選べる手が大きく減っている——これがレガシー問題の本質です。
この記事では、古い基幹システムを「コスト」ではなく「経営リスク」として捉え直し、先送りすると何を失うのか/いつ・何から動くべきかを、システムを作る側でもあり、自らも会社を経営する立場から整理します。
なぜ「コスト」ではなく「経営リスク」なのか
システムの刷新は、つい「お金がかかる作業」=コストの問題として語られます。しかし経営の視点で見ると、放置している古いシステムが抱えているのは費用ではなく、次の4つのリスクです。
| リスク | 内容 | 経営へのはね返り |
|---|---|---|
| 事業継続リスク | PCの買い替えやWindows更新で、ある日突然動かなくなる | 受発注・出荷・請求が止まり、売上に直結 |
| 属人化リスク | 作った人が退職し、中身を分かる人がいない | 障害時に誰も直せない/判断できない |
| セキュリティ・監査リスク | サポート切れ・脆弱性放置 | 取引先審査やISMS監査で指摘、信用低下 |
| 機会損失リスク | 新しい仕組みと連携できず、改善が止まる | 競合に後れを取り、現場の生産性が頭打ち |
特に深刻なのが属人化です。古いシステムは「動かす人」だけでなく「中身を判断できる人」も同時に失っていきます。社内にナレッジが残らず、外部ベンダーに頼り続けるしかなくなる——この依存の構造は、企業IT動向の調査でも繰り返し指摘されています(JUAS「企業IT動向調査2025」では、内製化を阻む最大の壁として「現行業務への理解不足」が挙がっています)。
「動いている」ことと、「会社の資産としてコントロールできている」ことは、まったく別の話なのです。
先送りの「本当のコスト」は、時間とともに膨らむ
レガシー刷新の判断を難しくしているのは、「今日明日で止まるわけではない」という点です。緊急ではないから後回しになる。ところが、後回しにしている間にも、刷新の難易度とコストは静かに上がり続けます。
- 当時を知るエンジニアが引退していく — 仕様を説明できる人がいなくなる
- ソースコードが失われる/開発元と連絡が取れなくなる — 中身を「推測」しながら作り直すことになり、工数が何倍にも跳ね上がる
- 保守費・人材単価が高騰する — 古い言語を扱える技術者は希少で、確保そのものが難しくなる
- OS・ブラウザの進化で互換性が切れる — 互換レイヤーで延命していたものが、ある更新で突然止まる
経済産業省が「DXレポート」で警告した、いわゆる「2025年の崖」——レガシーを温存した場合に最大で年間12兆円規模の経済損失が生じうるという指摘も、この“先送りの代償”を国の視点で言い換えたものです。基幹ERPの標準保守が切れる2027年問題も同じ構図で、延長保守に移れば保守費は上乗せされていきます(→ 詳しくは 2027年問題目前|老朽化した基幹システムの保守費が3倍になる前に打てる手)。
刷新は「壊れてから」では遅く、最もコストが低いのはまだ動いていて、中身を分かる人が残っているうちです。
では、いつ・何から動くべきか — 判断の順序
「分かった、危ないのは分かった。でも全部を一度に作り直す体力はない」——その通りです。そして、一気にやろうとするから腰が引けて、また先送りになる。これが最も多い失敗パターンです。
経営判断としては、次の順序で考えると現実的です。
- まず棚卸しする(リスクの可視化) 社内に「中身を説明できる人がいない自動処理・古いシステム」がいくつあるかを洗い出す。これだけで、どこから手をつけるべきかが見えてきます。
- 一番痛い所から着手する 全領域を同時にやらない。事業が止まると最も困る領域(受発注・在庫・請求など)を優先します。
- 業務を止めずに段階移行する 既存システムとAPI連携させ、並行稼働の期間を設けながら、領域ごとに新しいWeb/クラウドの仕組みへ順次置き換える。一括リプレースよりリスクもコストのピークも抑えられます。
- 作り直しながら“会社の資産”に戻す 権限管理・変更履歴を備えたWebシステムにすることで、「誰が・いつ・何を変えたか」が残る。属人化の逆——ナレッジが社内に蓄積する状態をつくります。
この進め方なら、数百万円〜2,000万円規模の段階的な刷新から始められます。「全面刷新で数千万円」と身構える前に、優先領域だけを切り出せば、投資は平準化できます。
発注で外さないための視点(会社選びのチェックポイント)
刷新を外部に任せるなら、価格表だけで選ばないことをおすすめします。経営判断として確認したいのは、次の点です。
- 現行業務を理解した上で要件を一緒に整理してくれるか(「何を作るか」より「何に困っているか」から入れる相手か)
- リリースして終わりではなく、その後の改善速度を約束できるか
- 段階移行・並行稼働で“業務を止めない”設計ができるか
- 社内にナレッジが残る形(内製化・運用支援)まで見据えているか
- セキュリティ・情報管理の体制(ISMS/ISO27001など)が確認できるか
国(経済産業省)も、これからのベンダーは「発注を待つ御用聞き型」ではなく「ユーザー企業の変革を手助けする提案型」へ移るべきだと明言しています。言われた通りに作るだけの相手ではなく、判断を一緒に背負える相手を選べるかどうかが、プロジェクトの成否を分けます。
SIAの進め方と実績
SIA株式会社は2003年の創業以来23年、100件を超える業務システム・基幹システムの開発と、レガシーからの移行を手がけてきました。代表自身がエンジニアであり経営者でもあるため、現場の言葉と経営の判断の“あいだ”を翻訳しながら伴走できるのが特徴です。
- Step1 現状分析 ソースコードが残っていればその解析を、無ければ画面と運用フローからのリバースエンジニアリングを行い、リスクと優先度を可視化します。生成AIの活用で、かつては高額だった旧コードの解読も現実的なコストでできるようになりました。
- Step2 段階移行の設計 完全リプレース/段階移行/機能単位のWeb化から、業務を止めない現実的なルートを提案します。
- Step3 Web・クラウド化 たとえば20年稼働していたVB.NET/VB6の販売管理システムを、業務影響を最小限に抑えながらLaravel+Reactのモダンな構成へ段階移行。ロールベースのアクセス制御や帳票出力など、旧来の作り込みも現代技術へ落とし込みます(VB6→Web移行は500万円〜・4〜6ヶ月規模の実績)。
- Step4 運用・内製化支援 移行後の保守に加え、情シス主導で改善を回せる体制づくりまで支援します。
情報セキュリティはISO/IEC 27001(ISMS)認証のもとで運用しており、監査や取引先審査で問われる管理体制も担保しています。
関連して、技術的な詳細はこちらもご覧ください。
まずは「自社のリスクの棚卸し」から
レガシー刷新は、いきなり大きな投資を決める話ではありません。最初の一歩は「自社の現在地を知ること」です。
- まずは無料で現状を把握 → DXセルフチェック(無料・個人情報入力不要) 7つの観点でDX成熟度をレーダーチャート化し、注力すべきポイントが一目で分かります。
- 何から刷新すべきか相談したい → CTO顧問サービス 「採用せずに経営レベルのIT判断力を持つ」外部CTOとして、刷新の優先順位とベンダー選定まで伴走します。
- 具体的な移行を相談したい → SIA株式会社へのお問い合わせ
「動いている今」が、一番いいタイミングです。自社のリスクとコスト構造を可視化するところから、一緒に始めてみませんか。お気軽にご相談ください。
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